四章

59/72
前へ
/240ページ
次へ
ついには目の前で母が泣き出してしまった。 それでもアシュリーは笑みを崩さなかった。 「………」 「………」 広間には沈黙が続いていた。 何の反応も返さないアシュリーに痺れを切らして口を開く。 「しゃ、謝罪をしたぞ……!?」 「はい、そうですわね」 「だからオースティンを治療してくれるわよね?」 するとアシュリーは思い出したとでも言うように手を合わせた。 「あぁ……そうだわ!そういえばわたくし、オースティン殿下にも随分と長い間、ひどい扱いを受けておりましたわ」 「……!」 「なのでわたくしは、オースティン殿下を死ぬほど恨んでおります」 「ぁ……」 「そんな人のために治療をするなんて考えられないわ。わたくしは、わたくしの愛する方にだけ力を使うと決めているのです」 「アシュリー、あなた……」 天使のように笑顔を絶やさなかったアシュリーが、今となっては悪魔に見えた。 だが、今はアシュリーの要望とも言える発言に応えるしか道はなかった。 「……オースティン、しっかりしろ」 「ゴホッ、ゴホ……!」 「寝たままでもよい!アシュリーに謝罪をするんだ!」 「ゴホッ、ごほ……っ!」
/240ページ

最初のコメントを投稿しよう!

330人が本棚に入れています
本棚に追加