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ついには目の前で母が泣き出してしまった。
それでもアシュリーは笑みを崩さなかった。
「………」
「………」
広間には沈黙が続いていた。
何の反応も返さないアシュリーに痺れを切らして口を開く。
「しゃ、謝罪をしたぞ……!?」
「はい、そうですわね」
「だからオースティンを治療してくれるわよね?」
するとアシュリーは思い出したとでも言うように手を合わせた。
「あぁ……そうだわ!そういえばわたくし、オースティン殿下にも随分と長い間、ひどい扱いを受けておりましたわ」
「……!」
「なのでわたくしは、オースティン殿下を死ぬほど恨んでおります」
「ぁ……」
「そんな人のために治療をするなんて考えられないわ。わたくしは、わたくしの愛する方にだけ力を使うと決めているのです」
「アシュリー、あなた……」
天使のように笑顔を絶やさなかったアシュリーが、今となっては悪魔に見えた。
だが、今はアシュリーの要望とも言える発言に応えるしか道はなかった。
「……オースティン、しっかりしろ」
「ゴホッ、ゴホ……!」
「寝たままでもよい!アシュリーに謝罪をするんだ!」
「ゴホッ、ごほ……っ!」
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