四章

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カルゴに支えられて、苦しそうに呼吸するのが精一杯のオースティンの姿を見てアシュリーはいい気味だと笑うだろうか。 目の前にはギルバートとアシュリーが寄り添う姿。 ふと横を見ると鏡が映る。 咳で眠れていないのか、目の下には隈が目立つ。 以前より病が進行したのか痩せ細り覇気もない。 しかし生にしがみついている自分がいる。 アシュリーが聖女として再び力を使ってくれるならまだ希望はあるはずだ。 アシュリーと目が合った瞬間、希望を見出したオースティンの瞳に光が宿る。 アシュリーから笑みは消えて目を細めた。 しかし言葉を紡ごうとしてもすぐに咳き込み背中を丸めてしまう。 「……ごきげんよう、オースティン殿下」 「ア、シュリー……けほっ」 「…………」 熱が上がってしまったのだろう。 まるでアシュリーに助けを求めているようにオースティンが震える手を伸ばす。 しかしギルバートはアシュリーを守るように肩を寄せて抱き込んだ。 「陛下……!もう長い時間はっ」 「わかっておる!」 カルゴが焦ったように大きく首を振る。 大きく頷いた父はオースティンに向かって口を開いた。 「オースティン、聞こえるか……!?」 「は、い……ッごほ」 「アシュリーは今までのお前の態度に心を痛めているんだ。どうすればいいかわかるな?」 「……!ごほ、っ」 オースティンの頬からは止め処なく涙が流れていく。 深々と頭を下げているオースティンは絞り出すように声を出した。 (オースティンside end)
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