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その日から、アシュリーの世界は一気に狭まった。
朝早くから魔獣避けの結界を張るために城に向かい、終わればすぐにエルネット公爵邸へ。
行列を作る民たちの治療を続けて、夜は貴族たちの治療を行うようになる。
年相応に令嬢たちと遊ぶこともパーティーやお茶会に出ることも禁じられた幼いアシュリーは泣き暮れていた。
『誰も信じるな!』
『必要以上に外に出るな!』
何故、自分だけがこんなにも苦しまなければならないのかと己の力を恨んだこともあった。
しかし十歳になる頃にはどうにもできないこの状況に諦めるしかなかった。
それでも周囲の人が幸せならば、自分も幸せだとそう思うことで心の安寧を保っていた。
反抗もせずに両親のいうことを聞いて、皆のために力を使い続けた。
『ありがとう』
その一言ですべてが報われる……心が軽くなるような気がしたから。
けれどその内、温かかったはずの家族の関係は知らないうちに歪になっていった。
父のカルロスと母のキャロルの関係は時と共に悪化していった。
すべてアシュリーの力の使い道に関することだった。
父に言われるがままにアシュリーは毎日、エルネット公爵邸で治療を行っていたが、その後に何かの袋を貰ってほくそ笑んでいた。
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