一章

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母も同じことをしていた。 アシュリーの部屋には、知らない人がひっきりなしに訪れるようになり、同じように金属が擦れる音がする袋を貰っていた。 次第に城に向かう以外は、ずっと部屋に居続けなければならなくなった。 しかしいつも喧嘩ばかりしている両親が袋を得ると笑顔になる。 両親の仲は一瞬だけ良くなるのだ。 家族が幸せになってくれるならばと幼いアシュリーは力を使い続けた。 自分が良い子でさえいれば、家族は仲良く笑顔でいられると信じて疑わなかった。 しかしアシュリーの想いとは裏腹に両親の喧嘩が絶えなくなった。 与えられる自由も、権利も、どんどんなくなっていく。 まるで見えない鎖に繋がれているみたいだと思った。 アシュリーは苦しいのに苦しくないフリをしていた。 泣き出しそうな自分を押し込めて、笑顔を浮かべ続けた。 そうでなければ心が壊れてしまいそうだったからだ。 ついには庭にも出られず、自分の部屋から外を眺めていた。 唯一の外出は毎朝、魔獣を祓う結界を張る時だけ。 アシュリーはオースティンに会うのをとても楽しみにしていた。
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