二章

22/56
前へ
/240ページ
次へ
「だが、ギルバート殿下との接点など今までなかったろう?よく知らない相手に嫁ぐなど……」 「もうこの国にわたくしの居場所はありませんわ。偽物の聖女と呼ばれるのはもうたくさん。わたくしは新しい場所に行きたいのです」 アシュリーとギルバートの関係など両親が知るはずもない。 しかしアシュリーの力を手放したくはないのだろう。 他国の王族に嫁ぐ名誉よりも目先の金。 アシュリーがいなくなれば、簡単に稼げなくなってしまう。 結婚したら当たり前だがこの屋敷から出て行くこととなる。 そうしたらアシュリーは自分たちの手の届かない場所へと行ってしまう。 つまり、もう楽にお金が手に入ることはないのだ。 ギルバートから突然の結婚の申し出に困惑する両親の態度は予想通りだ。 しかしこのことが知れ渡ればアシュリーの力を求めて他の国も動き出すのではないかとギルバートは言っていた。 「わたくしはエルネット公爵邸から今すぐ出ていきたいのです。だから結婚の申し出をお受けいたします」 「……!」 「ど、どうして?アシュリー」 「お父様とお母様も言っていたではありませんか……わたくしは役立たずで無能の娘ですから」
/240ページ

最初のコメントを投稿しよう!

327人が本棚に入れています
本棚に追加