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その言葉にアシュリーの指がピクリと動いた。
オダマキの花を机の上に置いてから両親に向き直る。
(…………なんて気持ちが悪いの)
あの瞬間から世界が色褪せて見える。
(自慢の娘……?わたくしを愛してるですって?馬鹿みたい。なんて意味のない言葉なのでしょう)
今更、何を言われようとも気持ちは変わらない。
もう彼らは切り捨てると決めたのだから。
アシュリーの気持ちを知ってか知らずか、タイミングを見計らったように母が口を開いた。
「そ、そうだわ……アシュリー」
「……」
「あなたに頼みたいことがあるのよ!ねぇ、あなた!」
「あ、あぁ……そうだな!そうだった」
「またアシュリーの力を必要としている人たちから依頼がたくさんきているのよ?」
「以前のように皆の治療をして欲しいんだ……!アシュリーもそろそろ皆のことが心配に思っただろう?」
「また困っている人を助けて欲しいのよ!前のように人を呼ぶから部屋で順番に治療してあげてちょうだい」
「お前の治療を心待ちにしている人がたくさんいるんだ!さぁ、部屋に戻ろうか」
その言葉を聞き流しながら腹の奥で煮えたぎるような怒りを抑えていた。
(ああ……なんて浅慮なのでしょう)
よくあんなことを言っておいて平然と「治療を行え」「部屋に戻れ」と、言えたものだ。
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