二章

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「何を勘違いなさっているのですか……?そもそもお父様とお母様が勝手にどんどんと連れてくるだけで、わたくしは自分から望んで治療をしていませんから」 「……っ!」 いつものように微笑みながら答えた。 母は目を見開いて怒りに震えている。 「なんて悪い子なの……!?」 「今までの我々に守られてきた恩を忘れたのかっ!?」 「今なら許してあげるわ!アシュリー……言うことを聞きなさいっ!」 「治療をするというんだッ!」 「…………」 アシュリーが今まで一度も反抗したことがないためか、両親から出てくる言葉は拙く、ただ単調な言葉を繰り返すだけ。 言うことを聞かないからと無理矢理、上から押さえつけようとしている。 恐らく少しでも反抗していたら、こうして責め立てられていたのだろう。 今まではアシュリーが反抗しなかったからうまくいっていたに過ぎない。 たった一回、言うことを聞かなかっただけで両親にとってアシュリーは悪い子になってしまった。 (ああ……悪い子になるって、こんなに簡単だったね) 絶望を映す瞳の中には、思い通りに動かないアシュリーに苛立っている二人の姿。 今まで良い子だったアシュリーは、たった一回の反発ですべてを否定されてしまう。 ずっと積み重ねていたものは一瞬で無に帰する。
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