一章

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オースティンも貴族たちも何故かアシュリーを嫌っていく一方だ。 治療を受ける時ですら、アシュリーに冷たい態度で接してくる。 あんなにもアシュリーに感謝してくれる国民たちも同じ。 アシュリーに軽蔑した視線を送る。 (わたくしがもっとがんばれば……!) それでもアシュリーは笑顔で対応していた。 国のために結界を張り続けて部屋に篭り、両親が言われるがまま治療を続けた。 どんなに蔑ろにされたとしても『ありがとう』と言われなくなっても、アシュリーは笑みを浮かべながら聖女として力を使い続けた。 そしてアシュリーが十六才の時だった。 王立学園にも通わせてもらえずに、相変わらず部屋の中に居た。 幸い王妃教育と家庭教師のおかけでマナーや勉強は困りはしなかったが、本当は寂しくて堪らなかった。 (でも、わたくしがわがままを言えば……すべてが壊れてしまう) あの一件からアシュリーは他者に迷惑を掛けてはいけないとすっかり大人しくなり、エルネット公爵邸の中ならば行動が許されていた。 (わたくしのせいで誰かが傷つくくらいなら……このままでいるしかないのよ) 心を開けたのは、幼い頃から世話をしてくれていた侍女のクララと兄のロイスだけであった。
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