二章

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アシュリーは今まで培った技術を駆使して綺麗なカーテシーを披露する。 今すぐにこの場を出て行きたかった。 ギルバートの手紙にはエルネット公爵の許可は後々に取るから無理をしないようにと書かれていた。 (二度とこの人たちの顔なんて見たくないわ……) アシュリーは二人に背を向けて歩き出す。 呼び止める声を無視して扉の外で待機しているクララと合流する。 大っ嫌いな部屋に戻り、大きなカバンに荷物を詰めるようにクララに頼む。 「ねぇ、クララ……」 「はい」 「……わたくしって、悪い子かしら」 「アシュリーお嬢様……」 「ウフフ、今からこの家を勝手に出て行くんだもの……とっても悪い子よね?お父様とお母様、どんな顔をするのかしら!」 「………」 これから治療を頼んでいた貴族や国民たちにどう言い訳するのだろう。 王家からも訪ねてくる貴族たちからも、もうお金はもらえない。 散々甘い蜜を啜っていたのに、自分たちの本来の仕事に戻れるだろうか。 それにこのまま治療しなければ、約束を守ることもできずにエルネット公爵家の信頼は落ちていく。 二人は坂を転がり落ちるように、どこまでも沈んでいくのだ。
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