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エスコートするために伸ばされたギルバートの手を掴む。
「父上も母上もアシュリーと会うのを楽しみにしているよ」
「まぁ……嬉しいですわ」
「ロイスもアシュリーとクララの心配していたよ」
「ありがとうございます。ギルバート殿下」
「……?」
「わたくしを救ってくれて」
ギルバートはその言葉を聞いて笑みを深めた。
エルネット公爵邸を出てギルバートとロイスが暮らしているペイスリーブ王国へと向かう。
両親には、まだまだ言いたいことがたくさんあったが、アシュリーがいなくなるだけで、じわじわと苦しませることができるはずだ。
その姿を見られないのは残念だが、勝手に落ちぶれてくれたらそれでいい。
高ぶる気持ちを抑えながら馬車に揺られていた。
* * *
アシュリーがペイスリーブ王国に向かってから数ヶ月の月日が経とうとしていた。
最初、両親はペイスリーブ国王宛に『アシュリーを返せ』と、抗議する手紙を送ってきた。
父と母はサルバリー王国の王家に助けを求めることすらできない。
今までやってきたことが仇となり、王家がエルネット公爵家を助けることは絶対にない。
自分たちが保護しているユイナがいるためアシュリーがどうなろうとどうでもいいのだろう。
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