二章

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ギルバートはこの国で「結界を張る必要はない」とアシュリーに言った。 魔獣に対する対策がしっかりとできているからだそうだ。 特別な魔法が使えるからと過度に持て囃されることもなく、アシュリーは王太子妃として扱われていた。 力はアシュリーの気持ちに任せられることになり、魔獣と戦い傷ついた人を癒したりすることを中心に力を使うことを決めた。 それから流行病に苦しむ街に行って力を使った。 もちろん無償で。 アシュリーは確固たる地位を築き、国民からも大人気だった。 ギルバートは言葉通りにアシュリーを救い出し、さまざまな脅威から守ってくれた。 アシュリーは自由になり、自分の足でどこにだって行けた。 今、アシュリーはオースティンのことを考えることも馬鹿な両親のことを気にする必要もない。 治療を受けに人も訪ねては来ない。 責任をすべて擦り付けるような視線も、縋るような視線もない。 アシュリーにとって、まるで天国のような場所だった。 そしてギルバートと愛を順調に育んでいるように見せていた……と言うべきだろうか。
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