二章

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「君がそばにいるなんて夢みたいだよ、アシュリー」 「わたくしも……あなたがわたくしを助けてくださってよかったわ。ギルバート」 「ああ、アシュリー」 毎日、ギルバートは愛おしそうに口づけては抱きしめてくる。 「ありがとう」「愛している」「幸せだ」 こんなにもアシュリーを必要として求めてくれる。 心が傷だらけになっていたアシュリーにとって、ギルバートの愛は少しずつアシュリーを癒してくれる。 ただ存在を肯定してくれるギルバートに絆されそうになるのを必死で耐えていた。 (復讐が終わるまでは……わたくしは揺らがない) 彼はアシュリーに正体を明かした時から、ストッパーが外れてしまったかのように愛情を向けてくる。 あまりにも完璧すぎるギルバートに疑念を抱いてしまう。 心を許したら彼はどう変化するのだろう。 互いの目的のためにこうすることを決めたのはアシュリーとギルバートだ。 彼と一緒にいることで、本当に愛されているのではと勘違いしてしまいそうになる。 そう思うのと同時にこう思うのだ。 『また裏切られたら?』 オースティンの時のように急に仲が崩れてしまうこともあるだろう。 『わたくしが愛されるわけがない』 アシュリーはずっとオースティンに愛されようとしてきた。 また騙されるのではないか、利用されて捨てられてしまったらと思うと踏み出せない。 (ギルバート殿下が何を考えているか、よくわからないわ)
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