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ペイスリーブ国王も王妃もギルバートがやっと結婚相手を見つけたことに安堵したらしい。
アシュリーは一通り王妃教育を終えていた。
多少なりとも文化の違いはあれど、この時ほどオースティンの婚約者でよかったと思ったことはない。
大っ嫌いな両親だがキチンと教育を受けさせてくれたことだけには感謝をしていた。
アシュリーは居心地がいいペイスリーブ王国が大好きだった。
クララもロイスもアシュリーのそばにいてくれる。
今までのように不当な扱いも、過度な働きもする必要はない。
(……こんな幸せが、あっていいのかしら)
大切な人に囲まれて自由を噛み締める度にアシュリーの空っぽだった心は満たされていく。
そしてサルバリー王国の噂を少しずつ聞いていた。
崩壊はもう始まっているようだ。
当たり前にあった幸せを奪い取り、徐々に彼奴らの背後へと迫りやって来るのだ。
「ギルバート、お疲れ様」
「ああ、久しぶりの一人の公務は寂しかったよ……アシュリー、おいで」
アシュリーは子供のようにギルバートの腕の中に飛び込んだ。
黒色の髪がサラリと流れた。
ギルバートの胸に寄り掛かりキスをする。
「お疲れですか?」
「少しね……今日は会議でオースティンに会ったよ」
「……!」
その言葉にアシュリーの心が騒めいた。
冷めきった瞳には、貼り付けたような笑みを浮かべているギルバートが映っていた。
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