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(今すぐにぐちゃぐちゃにしたい……二度と立ち上がれないように、わたくしの視界に入らないようにしないと)
その気持ちは時間と共に増すばかり。
アシュリーは自分の意思でオースティンから逃げてもよかった。
意味の分からない責任感に囚われて、王家のためにとがんばり続けていた。
両親に対しても同じことが言えるだろう。
壊したくないからと怯えてばかりいた。
結果、自らの首を締め続けた。
この事態は、一歩踏み出す勇気を持てずに部屋に閉じこもってばかりいた自分のせいでもあるのだから。
「僕は君を手に入れたのだと周囲に見せつけたいのかもしれない。でもアシュリーが嫌だったら……」
「嫌じゃないわ。必要とあらば後ろ指を指されたっていい。笑い者になったっていいわ……わたくしは目的のためなら何だってする」
「……アシュリー」
アシュリーはギルバートとの幸せを得たとしても、心の中の憎しみは消えはしない。
彼らが最後まで転げ落ちた時……苦しみ悶える様を見て初めて心から笑えるのだ。
ギルバートは話題を変えるようにアシュリーの髪を梳いた。
「……そのドレス、とてもよく似合ってるね」
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