二章

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今、アシュリーはギルバートから贈られたドレスを着ていた。 肌を全て覆い隠すようなレース生地、その色は黒か赤……以前のアシュリーとはまったく真逆のイメージだろう。 周囲にはギルバートの髪色と瞳の色のドレスを好んでいるように見えるだろう。 しかし以前のアシュリーを彷彿とさせる色は身に纏いたくはなかった。 「ありがとう」 「アシュリーの真っ白な肌に黒はよく映えるね……まるでビスクドールのようだ」 「ふふっ……」 ゾッとするような美しさと雪のように白い肌。 そこに血のような真っ赤な紅を塗り、濃い色のドレスで肌の白さを引き立てていく。 端正な顔立ちをしているギルバートの隣に立っても引けを取らないように努力はしていた。 オースティンの好みとはあえて逆にしている。 (これが新しい自分よ……もう誰にも従わない) そんなアシュリーの気持ちを理解しているギルバートはドレスをプレゼントしてくれる。 「この黒のドレスが一番のお気に入りなの。この間買ってくださったボンネットともよく似合うのよ」 「そうだね。以前より、とてもいい顔をしているよ」 アシュリーはギルバートの手を取ると人形のようにクルクルと回って無邪気にドレスを見せる。 ミルクティー色の髪には紫陽花の花弁を用いた髪飾りが散りばめられている。 「そうだわ!お庭にロベリアを植えたいの……いいかしら?」 「ああ、もちろんいいよ……すべてアシュリーの好きにしていい」 「……ギルバート、あなたが大好きよ」 「僕も君を心から愛している」
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