二章

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アシュリーはギルバートの微かに震える手を握る。 今は彼と出会った時のような良い子なアシュリーではない。 それなのにこうして約束を果たそうとしてくれている。 (馬鹿な人……こんなわたくしを好きになるなんて) そんなギルバートの姿を見て可哀想だと思っていた。 「あなたとなら大丈夫……絶対にうまくいくわ」 「そうだね」 ギルバートを宥めるように頬を寄せた。 軽くリップ音を立てた後に深い深い口づけを交わす。 名残惜しそうに離れた熱……アシュリーの唇は綺麗に弧を描いた。 (これからどうなるのかしら……楽しみだわ) 今、アシュリーが生きているのか死んでいるのか……王家やオースティンにとってはどうでもいいことだろう。 今まではアシュリーの名前も思い出すことはなかったはずだ。 しかし追い詰められるほどにその存在を再認識することになる。 オースティンはアシュリーが幸せを掴んだと知れば、どう思うだろうか。 今は興味すらないだろうが、それが効果を発揮するのは彼が苦痛に顔を歪める時だろう。 王家にとってはユイナは異世界から舞い降りた本物の聖女なのだ。 彼女のおかげで寄生虫のように金を無心する不愉快なエルネット公爵家と関わりを絶つことができたのだ。 そう思うとユイナに感謝しなければならないのかもしれない。
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