二章

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(ギルバートside) アシュリー・エルネットはオースティン・ジノ・サルバリーの婚約者だった。 しかし表舞台には滅多に出てくることはなかった。 ペイスリーブ王国とは違い、サルバリー王国は魔法を使う者がいない。 アシュリーを一目見た時から、彼女はペイスリーブ王国の人間ではないのかと思うくらい魔力を強く感じた。 ギルバートが体調不良を隠してパーティーに出席したことがあった。 大切なパーティーでペイスリーブ王国の王太子として失態は犯せない。 そう思っていたが、冷や汗が滲んでいく。 「大丈夫ですか?」 「……あなたは?」 ギルバートがにこやかに笑って誤魔化すように答えた。 「アシュリー・エルネットです。顔色が悪いですが……」 うまく取り繕っているつもりが見破られるなんて思いもしなかった。 「いえ、大丈夫ですよ」 「手を出してください」 「……!」 アシュリーは魔法の力を使い、ギルバートの熱を治してしまった。 小さな手から感じたことがないほどに温かい魔力を感じていた。 ミルクティー色の髪とライトブルーの優しい瞳、 彼女の可愛らしい笑みは今もはっきりと残っている。
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