引っ越しとご挨拶

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「おはようございます!私ら今日隣に引っ越してきた武藤って言います。あのヘラヘラ笑っているのが主人で、ちっさいイケメンが息子のいおりです。これからよろしくお願いしますね?これは、つまらないもんですけど……」  女の人は、こだまの勢いにびっくりしていたが、優しげなほほ笑みを浮かべた。その後ろから、ピョコンと見えた小さな頭。 「高橋です。うちも3人家族で、主人はあいにく出かけているけど……娘の陽奈(ひな)、4年生です」  母親に背中を押されて、陽奈はもじもじと出てきた。肩まである髪を、可愛らしいリボンで結んでいた。 「……おはようございます」 「いおり、ご挨拶は?」  こだまにうながされ、いおりは陽奈の前に来た。練習した言葉は、緊張ですべて飛んでしまった。 「い、言っとくけど、キュウリは半分こやからな!」  慌てたこだまとたしりに引っ張られ、ペコペコ頭を下げながら逃げるように家の中に入る。  陽奈はニコニコと、武藤家に手を振っていた。 「なんか、面白い子やね?お友達になれたらいいね、陽奈」  夕方に、陽奈の両親がクッキーを持って挨拶に来た。たしりもこだまも社交的で、玄関から聞こえてくる声には笑い声もまじっていた。  テーブルに置かれたピンク色の箱からは、いおりが嗅いだことのない匂いがしていた。  こだまが戻り、ヒョイと箱を持ち上げると、そのまま馬鹿力で箱を破壊する。
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