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我らは河童なり
武庫川をネジロにする村は、88匹の河童からなる関西で2番目に大きな村だ。
淀川をネジロにする村は、『一級河川』と『琵琶湖』を自慢する関西一大きな村で、態度もデカイ。
たまに支流で出会ったら、たちまち悪口合戦になる。
「二級河川の河童は真ん中を泳ぐな!端っこで甲羅でも干しとけや!」
「何やて?琵琶湖信者がぁ!」
罵り合った後には、お決まりの『河童の川流れ』勝負が始まる。いかに美しく流れに乗って川を下れるか、体勢、表情、水掻きの揺れまで細かく評価される。
結局勝負はつかず、丘に上がって相撲勝負になるのがいつものパターンだ。
大人になった河童はまさに大人げなく、子供河童達には聞かせられない醜い罵り合いをし、夜になろうが喧嘩は止めない。
子供河童は、『河童の川流れ』も相撲も遊びの延長だ。大人達が激しく争っている隙に、仲良くなって遊んだりしている。
今日も相撲を取り始めた大人達をよそに、子河童2匹は魚取りを始めた。
「もう少し透明度があれば見えやすいのに……」
「ほんま、ほんま。あっ!汚いパンツが流れてくるで」
潜って魚を探しても、なかなか見つからない。今日の支流はハズレのようだ。ゴミとパンツしか収穫がない。
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