我らは河童なり

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「座っておやつにせえへん?ぼーっとしてた農家のおっさんの尻子玉(しりこだま)抜いて、キュウリをゲットしてん」  淀川の子河童は、パキンといい音をたててキュウリを半分に折ると武庫川の子河童に手渡した。 「もう尻子玉抜いてるん?尻子玉抜かれたおっさんはどうなるん?」 「何かな、ますますぼーっとしてた」  河童から尻子玉を抜かれた人間は死ぬと言われているが、尻子玉を抜かれたくらいで人間は死なない。  せいぜい倦怠感に襲われるくらいだ。ましてや子河童の尻子玉抜きなど、大した威力はない。 「それより、オマエの名前教えてや。オレは淀川の」 「オレは武庫川の!キュウリありがとう、いぶき」  2匹は再び川に入った。頭にある皿の水が乾かないように。  少なくなった魚を追いかけたり、潜りっこしたり、二人はクタクタになるまで遊んだ。 「また明日遊ぼ!とっておきの支流を教えたる。魚も沢蟹もいっぱいおるねん」 「ほんなら、明日の昼にここで待ち合わせしよ」 ──約束、約束、ヤッパッパー!  いおりといぶきは、手を振りながら反対の方向へ泳いで行く。その後を追いかけるように、大人河童達が泳ぎ出した。 「明日こそ決着つけるからな!奥歯ガタガタいわしたるからな!」 「ぬかせ!武庫川の田舎もんがー!」  大人げないこと極まりない。  
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