我らは河童なり

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 いおりは、武庫川の村で最後に生まれた子河童だ。いおりが生まれてから10年、子河童が生まれていない。    河童の村は日本全国にあるが、どの村も10年前辺りから子河童が生まれていない。  村の長老達の頭を悩ますこの問題は、春に開かれるJ K C(日本河童会議)で、何度も話し合われていた。  自称エリート河童軍団、九州地方の河童達さえも、3%くらい河童人口が減っていた。  筑後川は阿蘇山や瀬の本高原を水源とする、恵まれた美しい一級河川だ。暴れ川ともいわれ、河童達の気性も荒い。 「水質汚染たい。人間どもが上流を観光スポットにしたからたい。あぁ、毎日がしぇからしか!だから子が出来んったい」  関東の牛久沼河童も、東北の河童淵の長老も口々に賛同している。 「いつまでも人間のせいにしてたらアカンのとちゃうか?ほんまに水質汚染だけの理由やろか……ワシはちゃうと思うけどな」  武庫川の長老ムジロウが他の長老達に問いかける。気まずそうに目を逸らす長老、頭の皿にエナジードリンクを補給する長老、寝たふりの長老もいた。 「細かいことは言わんけど、関東の若い奴ら……ぎょうさん人間界に流れてるらしいな?憧れの東京とか言うてなぁ?」  近年、村の暮らしを捨てて、人間界で面白おかしく暮らす河童が増えて来た。  ムジロウの村も、いなくなった河童が数名確認されている。  
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