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武庫川の長老ムジロウに呼び出されたいおりは、いぶきと早く遊びたくてソワソワしている。一緒に呼び出された父と母も、緊張のせいか落ち着かない。
「時は来た」
何が来たのかとキョロキョロするいおりの手を、母がそっと握った。
「アカデミーが開校し、学びを終えた河童達が人間界に行くまで3年はかかる……しかし、ワシらには時間がないんや。ええか、ちょっとフライング気味やけど、おまえ達家族ならやれる!」
父がかすかに頷いた。いおりの手を握っている母も、同じように小さく頷いている。
「ちょっと待って、ムッジー。なんの話なん?」
「コラ、いおり!長老さまと言いなさい。ムッジーはアカン、ムッジーて──」
笑い上戸の父は、笑いながら叱っているからいおりには屁の河童だ。
「かまへん、かまへん。いおりはなぁ、人間界に行って人間の良いところをいっぱい吸収して、ほんで立派な河童になって戻って来るんやで?」
「嫌や!」
即答だった。
「いおりは人間が嫌いか?」
「オレは河童や!人間とちゃうやろ!」
ムジロウは父に近づくと、頭のお皿を葉っぱで撫でた。たちまち父は人間の姿になる。
「ヒィーッ!!父さんがぁーー」
「これはシダの葉っぱや。この葉っぱで撫でると、河童は人間に化けられる。どうや?Excellentやろ」
いおりは、シダの葉っぱから逃げるように身体を捩っている。
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