河童の秘薬

3/4

19人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「でもな、このやり方は古臭い。今はサプリメントの時代や」  ムジロウは、ビンに入った黒いサプリメントを数個取り出すと掌に乗せた。色からは想像できない爽やかな香りが辺りを包む。 「シダの成分をギュッと凝縮したからサクッと人間に化けられ、なおかつ、河童臭を緩和してくれる秘薬や」  いおりはそっぽを向いたまま、貧乏ゆすりを始めている。いぶきとの約束があるからだ。 「いおりよ、気が乗らないのはわかるが……ワシらはもう10年人口が増えておらん。減るばかりでなぁ。何もしなければ絶滅よ」 「なんでオレ達が行くの?」 「まぁ色々基準はあるが……ワシが一番信頼している大好きな家族──だからかな」  いおりだって薄々気がついている。いつの間にかいなくなった仲間達が、人間界に紛れて暮らしていると。  お喋りなオバサン河童達が、まるで見たかのようにマシンガントークをしていた。 「オレ、知ってる。人間界に行ったタロウおじさんは、正体がバレて殺されたんやろ?他にも知ってるで!みんな帰ってこないやんか!」  村の薬屋をしていたタロウ河童は、1年前にいなくなった。  88名総出で探したが見つからなかった。 「タロウなぁ……あのバカタレが……」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加