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「そんな怖いところに、オレらを行かせるん?殺されてしまうようなところに!」
タロウ河童の生死は不明だが、村の仲間達は人間に殺されたと思っている。
ムジロウとガタロウとて、好きこのんで人間界に大切な仲間を送り込みたくはない。
時代は変わり、人間も変わった。
大昔のように河童と共存してくれない。
人間の利益になる事だけ力を入れる。
故に河童はキャラクターとしてしか利用されない。
「いおりはこの村が好きか?」
「めっちゃ、好きや!」
いおりは握っている母の手を振り払い、小さいながらも拳を作る。
「ほんなら、なおさらや。この村の未来はオマエらにかかってるねん。河童絶滅カウントダウンを止めてくれへんか?」
「……ムッジーが行けばいいやん」
痛い所を突かれた長老は、わざとらしい咳をしながら、腰がぁ~、脚がぁ~、皿がぁ~と言い訳のオンパレードだ。
「つまりや、年寄り河童ではアカンのや」
「弱虫……」
「どっちがやねん!人間界にもええとこはたくさんあるで〜。特にアレなんかは食べたらもう、軽く死ねるほど旨い!」
ムジロウは、長老としての威厳もプライドも知性もかなぐり捨て、食べ物でいおりを釣ろうとしている。
「……なんなんそれ?キュウリよりも美味しいの?」
「キュウリやて?はぁ~甘い甘い。毎日──いや、3時間置きに食べても飽きないアレ」
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