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「かんぱーい」
新成人の彼ら、彼女らは各々ドリンクを右手に。
地元田舎の居酒屋大広間、当時の3年1組生徒全員が1人もかけることなくしっかりと顔を揃えていた。
僕らの青春時代は平成13年、中学3年生の頃。
担任は音楽の高橋先生で、体育会系が問題視されつつあった当時には少し珍しい、いわゆる昭和の漢という名がふさわしい熱い教師だった。
当時は合唱コンクールなんてものがある中学3年の担任が、よりにもよってあの高橋か……なんてクラスの誰もが愚痴をこぼしたものだ。
高橋先生はどんな問題児クラスでも、合唱コンクールでは県の大会まで連れていく名教師というのが、僕らの街で知らぬものはいない有名話。そして僕らも例外なく高橋先生の元に集められた問題児クラスだった。
僕らのクラスは過去に悪戯で踏切の停止ボタンを押して警察に捕まるやつもいれば、高校生ヤンキーと売春に走る女なんかもいたりして。そんな僕らが今こうして過去の思い出話に全員が顔を揃えているのは、間違いなく高橋先生が中学時代最後を担ってくれたからに違いないと思う。
「中学の俺らの青春って言えば、やっぱり合唱コンクールだよな」
「学校生活1/3が合唱コンクールだったもんな」
「違いない」
「そうだなぁ、懐かしいな。先生、向こうでも相変わらずかな」
僕のふとしたその言葉に、皆のグラスが一瞬止まった。
みんなの視線は少し下を俯く者もいれば、天を仰ぐ者も。それはまるで、みんなの意識が当時にタイムスリップしたかのようだった。
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