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 その日の帰り道―― 「お疲れ様でしたー!」 「お疲れ様ー!」  後輩達に手を振って歩き出そうとした私を、美桜が押しとどめた。 「……ねぇ、見てあれ」  少し先に、並んで歩く二つの人影が見えた。  遠目でも目立つ金髪に近い明るい髪は、加藤千尋だ。遅刻やサボりの常習犯で、誰もが知る問題児。クラブやライブハウスにも出入りしていて、怖そうな人達と歩いているのを見たという人もいる。かと思えば妙に人懐っこい一面もあったりするのがかえって異様さを際立たせていて、常に周囲からは浮いた存在だった。  ただし、私達の目を引いたのはその隣にいる黒髪の生徒の方だった。  彼女のトレードマークとなる、肩で切りそろえられたおかっぱの髪。  あれは、私の前に合唱部の部長だった蓮田珠季に違いなかった。  あの二人が一緒に歩いているなんて、少し前なら想像もできなかった光景だ。 「……珠季のやつ、千尋となんてつるんでるんだ」  千尋と珠季の後ろ姿を見ながら、美桜は感慨深そうに言った。 「歌を忘れたカナリヤは……なんてね」  捨てられたり、埋められたり、ぶたれたり。  美桜の頭の中に浮かんだカナリヤがどんな姿なのかは知らない。ただ口元に浮かんだ笑みが、不快だと思った。
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