4/8
前へ
/8ページ
次へ
   ◇   ◇   ◇  しばらくの間、珠季は学校も休んだ。  冬休みに入り、三学期の始業式を迎える頃になってようやく、教室に珠季の姿が戻って来た。  ほっとしたのもつかの間、珠季の様子は明らかに違っていた。いつもぼーっと自分の机に座っていて、自分からクラスメートに話しかける事もなくなった。合唱部の一件はクラス中に知れ渡っていたから、クラスメート達も遠巻きにするばかりで珠季に近寄る人間は皆無だった。  歌う事をやめた珠季は、空気になったのだ。  きっかけは間違いなく、私達だ。部長の珠季を無視して、部員達だけで暴走して……あのクーデターにも等しい事件の後から、珠季は変わってしまった。   そして―― 「こうなった以上、副部長の優香がやるしかないよね」  空位となった部長の座には、てっきり美桜が収まるのだとばかり思っていたのに、美桜は得意げに私に向かって言ったのだ。  大丈夫。これからはみんなで仲良く話し合いながら、楽しくやっていくんだから。優香は今まで通り、にこにこ笑ってみんなを見守ってくれればいいんだから。  合唱はチームプレイなんだから、仲良く楽しくやっていけば、きっと全国にだって手が届くって証明してみせようよ。  優香はにこにこ笑っていればいいんだから。  優香はただそこにいるだけで。  いるだけで……。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加