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まだら模様みたいだ。
指揮棒を振りながら、私はぼんやりと思った。目の前の惨状があまりにも酷過ぎて、他人事みたいにしか受け止められない自分がいた。
なんとかまとめよう、混ざり合わせようと必死になればなるほど、一つ一つの歌声はてんでバラバラに飛び上がり、かえって混沌さを深めていく。狂ったリズムが、不協和音が、尖ったガラスみたいに耳に障る。
「ストップ! 止めて!」
歌声が、美桜の合図でピタリと止んだ。
「……ちょっといい?」
何事かと視線を泳がせる部員達をよそに、美桜は私を外の廊下へ出るよう促した。
「ちょっと! あまりにもひどくない? あと二月しかないのに、マズいよこれ」
「……ごめん」
容赦なく突き刺さるような言葉に、私はつい目を伏せる。
「特に好美と友理奈、適当に歌ってるの気づいた? マジでやる気ないでしょ。あの二人がいい加減だから一年が真似するんだよ。優香は部長なんだから、ガツンと言ってくれないと!」
二人が空気を乱しているのは、私もよく知っている。以前に注意した事だってある。でも何も今さらと言わんばかりに、鼻で笑い飛ばされただけだった。
「仲良く、楽しくやろうって言ったの、優香達でしょ?」
二人の主張はもっともで、私には何も言い返せなかった。でもそれを言ったところで、美桜は聞きはしないだろう。
「楽しくって言っても、いい加減にやるのとは違うじゃない。とにかくなんとかしないと! しっかししてよ! 部長なんだから!」
「……うん」
私は暗たんとした気持ちで、頷き返した。
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