第二章 

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1995年 18歳になったアイは相変わらずバイト中心の生活をしていたがお菓子を完全にやめて食事に気を使いバスを2駅前で降りて歩くようにしたらするする痩せていった。 痩せたらこころなしか浮き沈みが減り精神的に安定していた。 そんな頃だった。 最近よくひとりで来店するお客がある日オーダーを受けに行った際にアイに話しかけてきた。 「君さ、前に一度わたしに会ったの覚えてるかい?」 アイは顔は思い出せなかったが声は聞いた事あるような気がした 「この店以外ではお会いしたことはないかと…すみません。 わかりません。」 「そっか…気を悪くしたらすまない。 君は忘れてしまっているかもしれないが…」 「はい…」 「わたしは君に傘を渡したんだよ」 「あっ…」 アイは思い出した 「あの日の君はひどく可哀想だった。 なんというかずぶ濡れだったし 明らかに君は訳ありだった でもどこか君は強く見えたんだ ほんとにまずいなら警察呼んだりしたけど君は強く見えた この子は大丈夫だって。」 「…あの、傘返しに行けなくてすみませんでした…あの日はその…」 「言わなくていいよ。 この店で君を見た時に安心したんだよわたしは。ほら大丈夫だったって。 君は強い子だね。」 アイは泣いた 理由はわからない ただ自分ではどうしようもなくボロボロ泣いていた。
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