第二章 

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それからアイは居酒屋バイトをしながら昼間は参考書を買って勉強を始めた。 志望していた准看護師学校の受験科目は中学卒業程度の英語、数学、国語、小論文だ。 小論文はその単語の意味から調べた。 読んだこともなければ勿論書いたこともなかったから。 カサダがある日店に知り合いだという、大人の女の人を連れてきた。 仕事は看護師をしているといった。 小論文について聞いてみると、 「あまり難しく考えなくていい、 自分の看護観をテーマにした感想文だと思って書くといい」 と言われた。 看護観なんて言葉もよくわからなかった。 「アイちゃんが大切にしたい人が病気だったら自分はどうする? どうしたい?って考えたらいいよ」 と言われた。 大切な人なんていないし他人なんてどうでもよかった。 アイはそのまま伝えた。 「…そっか。 じゃあ、もしタイムマシンがあって辛かった頃の昔の自分に会えるとしたらその子に何をしたい? 何を言ってあげる? それか無理に何かしなくてもいいし。 ただ隣にいてそっと寄り添うだけでいい。心の傷は簡単には治せないから。 それも看護だよ。」 それは少し理解できた。 「でも、浅はかな理由で… 例えばあたしみたいに他にやりたいこともないからとか、中卒でとれる資格だからとか… そんな適当な理由で目指したりしちゃダメなんじゃないの? 人の為に働く仕事なんでしょ? あたしで役に立つのかもわかんないし」 「いいの。それでいい。 自分の自己満でいいの。最初のきっかけなんてなんでもいい。 私の看護学校の同期なんてはじめは医者と結婚したいから資格とったって言ってたからね笑 まぁいまでは師長クラスでバリバリやって医者にも指示出ししたりして煙たがられて結婚どころかキャリアウーマンまっしぐらだけど。 まぁとにかく、 理由がなんであれ結果、 誰かの役には絶対たってる。 アイちゃん大丈夫だから。 辛い経験がある人間だからこそ寄り添えるってことあるから。」 それからはとにかく勉強した。 元々勉強は苦手だったが目的があってやる勉強は楽しかった。
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