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1993年夏、16歳のアイは郊外の自宅を夕方出発し電車と市電を乗り継ぎ40分かけ市内唯一の歓楽街へ繰り出していた。
雨が今にも降りそうな空だったが傘は持たずに出た。
郊外の高校に通うアイは毎週末、ミニスカをはき化粧をして街に繰り出し高校で初めてできた友達の椎原と朝まで遊んでいた。椎原とプリクラをとりカラオケに行き年齢を誤魔化して安い居酒屋で飲んだりする程度だったがアイにとっては充分刺激的だった。椎原といると楽しかった。一緒にいてまったく飽きなかった。
繁華街でナンパされるのも楽しみのひとつだったがアイにというより椎原がいつもナンパされてついでに横にいるアイも誘われるかんじだった。
ナンパされても危険な個室の居酒屋やカラオケには絶対ついていかなかったし連絡先を交換しても二度と会うことはなかった。
ナンパされる時は椎原が乗り気じゃない時はすぐわかるためすぐさま表情をキャッチし剥がしの役目はアイがやった。
「ごめんなさいこのあと約束あるので」
と、立ち去るアイの背中越しに
「誘ってんのはお前じゃねーよ」
と捨て台詞を言われたこともあるがまだそれはいいほうでアイなんかまるで横にいないかのように椎原だけに声をかけてくるナンパも数多かったが、惨めになるどころか美人な椎原と一緒にいられる自分が誇らしかった。
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