第三章

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「アイー!こっちこっちー!」 待ち合わせ場所のあるパルコの噴水のとこで美咲が手を振っている。 あたしは美咲に借りたストライプのシャツワンピースにレギンス、かごバッグという着慣れない服に気恥ずかしさを覚えながら美咲に手を振った。 「美咲ごめんねー!待った?」 「あたしも今来たとこだよ~ アイ、いいじゃんめっちゃ似合ってるよ~」 「まじ?変じゃない?」 「いいかんじ!いいかんじ! 今日は彼氏ゲットしようね。 彼氏いない歴イコール年齢のあたし達には滅多にないチャンス! がんばろうね」 「あたしは付き添いだってば!」 「はいはいほらいくよー!」 看護学校の同期の美咲とは席が隣になったがお互い人見知りのせいで気にはなるが最初はほぼ話もしなかった。 ある日、小テストが返却された時にふたりの解答用紙が間違って配られた事をきっかけによく話すようになった。 ちなみにそのときはあたしが45点、美咲が48点。 ふたりともばっちり落ちこぼれでしっかり赤点だった。 アイが通う郊外の田舎にあった看護学校は講師の先生が近医の医者がほとんどだった。 医師会に所属している医者で持ち回りで専門科別に講師をしていた。 医師業の合間に時間を作って授業やテスト問題を作るのだから先生によっては毎年同じ内容や少し変えただけということがよくあった。 なので学生は過去のテスト問題を知り合いの先輩に借りたりしてそれをグループ内で回したりする。 でないと、意地悪な医者なんかがたまに専門的な知識がないと解けないような医学生とかに出すようなものを出してきてはガンガン赤点者を量産させてくる。 よほど頭が賢くないと高得点はのぞめない。 意地悪じゃない医者のテストでも過去問がないと毎回テストを乗り切るのは厳しい。 最初のスタートで人見知りが発動してグループ作りにしくじったアイと美咲はもれなく落ちこぼれていた。 でも美咲は住み込みで産婦人科で勤務しながら昼間は学校に通っていたので同じ病院に勤務する先輩からコピーを借りれたのでアイもその恩恵に預かりギリギリのとこでふたりともクビは繋がっていた。 「アイ、一緒にコンパ行かない?」 美咲が授業終わりに言ってきた。 「コンパ?行かない。」 あたしには恋はまだ無理のような気がしていた。 美咲には過去の3P未遂事件も潤平のことも話していない。 「そこをなんとか! アイちゃーんお願い! あたし彼氏欲しいよぅ… この日々を耐えるには彼氏という癒しが必要だよぅ… 病院の先輩が知り合い紹介してくれて、いきなりふたりは恥ずかしいからじゃあ4人で飲み行こうって話になったからさ…アイ以外誘えるの誰もいないしさ… OKしたからもうひけないよぅ… 頼む!!」 「…あたし来てく服なんて持ってないし、 あたし男の人とちゃんと話せないよ? いいの?」 「いい!横にいてくれるだけでいいから!」 普段から美咲にはお世話になってるし1回だけならいいかな… 「じゃあ1回だけね」 「やったぁー!!さすがアイ! 洋服はあたしが貸すから大丈夫!楽しみだなぁ」
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