植物化人間

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 砂嵐に巻き込まれて砂丘をゴロゴロと転がり落ちるが。怪我などしない、なぜなら砂しかないからだ。 「あはは。セーフセーフ」  笑ったのは本当に久しぶりだと思う。祖母とおはぎを食べていた時だったか。最後に口にした人間としての食事はあの時が最後だ、大好きだった祖父がなくなった時。  悲しかったが、おいしいねと祖母が笑っていてつられて笑った。思えばあの時から、祖母の体には睡蓮が増えてきたように思える。  結局この現象が何なのか、どうして祖母の体を栄養にして植物だけが生き残ったのか。謎が多い。でもそれを知ったからといってなんだというのだ。  寝転がったまま太陽に向かって腕を「伸ばす」。 「やっぱり、伸びてるんじゃなくてそっちに動かしてるだけだと思うんだけど」  太陽を見つめる。植物はみんな太陽の光をたくさん浴びたくて、太陽に向かって伸びている。 「でも、そっか。私は、もう、伸びることができるんだ」  歩いているときに見つけた、少しだけ地盤がしっかりした土地。そこに降り立ち、裸足となった。棘だらけの手を見つめる。 「おばあちゃん、頭を撫でてくれてありがとう」  両手を太陽に向けて伸ばす。全身で光を浴びて、気持ちが良い。 「見つけました、あれこそ我々の希望です」  民衆が次々と死に耐えていく中。シェルターの中で、研究を続けながら人類が生き残る道を探っていた研究者たち。  自分たちにももちろん植物の特徴は現れている。地球温暖化の影響を受けないよう、温度調整をされた施設で暮らしてはいるが。人として生きるか、植物と同化した新たな人間として生きるか。研究者たちは後者を選択した。  ドローンを使って世界中を監視している中、一人の研究者が見つけたのだ。砂漠にポツンとたたずむサボテン。明らかに人の形をしている。ドローンを使って通信で話しかけてみる。しかしあれこれ聞いても特に返事は無い。  既に人の部位はほとんど残っていない。棘だらけで、うっすらと人だったのではないかと思わせるような凹凸があるだけだ。 『あなたのお名前は!? 僕は篠崎っていうんですけど!』  諦めかけていたが、職員がそう問いかけた時。 【コノミ】  研究所の中が静まり返る。口の部分が動いた様子は無い。どうやら独特の発声方法を持っているらしい。 『ぜひあなたに協力していただきたく!』 【ここに来て】
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