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六花鐘(りっかしょう)さん、聞こえて」 「感度良好(メリット5)です、隊長」 「まだ葉桐(はぎり)さんの金時計は持っているわよね?」  ええ、と魔界最深部の搾精施設を退出しようかと思っていた六花鐘碧砂(へきさ)は答えた。  小佐野美潮(みしお)は六花鐘碧砂に、アリゾナの飛行機墓場に最大級の通常爆薬が連続で投下され、魔界ポータルが開いたのみならずハックまでされていたことを告げた。   「六花鐘さん、今、搾精施設はどんな感じ?」 「(オルゴン)エネルギーを普段よりも桁違いの勢いで吸収しているので、かなりの数の男性が死亡しております」  なら、と小佐野隊長。 「一瞬、秋葉原と渋谷、それに新宿もかしらね……魔界ポータルを開くから、そちらにいる小悪魔ちゃんたちに、とにかく人間界の男性を連れ去って、新たに搾精施設に放り込んでもらって頂戴」 「隊長、お言葉ですがそういった街の上空には天使軍が監視の目を光らせているのでは……」 「だからって今、(オルゴン)エネルギーがなければ全滅よ──小悪魔の子たちが地上で男性を狩るための魔界ポータルを開いてもらいます。これをそこにいる皆に伝えて」 「わかりました。わたしもですか?」 「六花鐘さんは別、今、あなただけの魔界ポータルも用意するから……」    数十秒して、再び小佐野隊長の声が、ハンディサイズの広帯域無線受信機から聞こえる。  もうすでに一部の小悪魔たちは人間の住まう街へ魔界ポータルをくぐっていた。  準備できたわ、と小佐野隊長。 「六花鐘さん準備はよくて? この魔界ポータルはとってもピンポイントなの、魔界ポータルをくぐるときは直前で助走をつけて飛び上がる感じでお願い、失敗すると死ぬか大怪我するわよ」 「Copy(了解)」と、六花鐘碧砂。  ちょうど碧砂の背丈ほどの小さな魔界ポータルを前にして、碧砂は言われたとおり、助走をつけ軽くジャンプするように瞬間移動した──ヘリコプター、UH-60Jブラックホークの爆音が耳を(ろう)する。
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