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聖パルーシア学園の警戒態勢も解かれ、あちこちで戦闘を繰り広げていた中等部、高等部の特殊部隊も全員がそれぞれの部室へ帰っていった。
椿銃砲店の損害は甚大で、かなりの部分を改修しなければならなかった。とは言うものの、聖パルーシア学園が顧客である取り引きデータや、銃器のカスタマイズデータなど、機密は地下に隠されたバックアップ用のサーバに残されており、最悪の事態はまぬがれた。
「本当に、当店を守っていただきありがとうございました」
椿銃砲店、椿にとろの許婚、アリョーシャちゃんが深々と〈アンティセプティック・チーム〉の面々に頭を下げた。
アリョーシャちゃんは人外というよりは、二足歩行や起立ができること以外はほぼ猫だった。ますむらひろし氏の描くまんがのような、と表現すれば話は早いかもしれない。
椿にとろは、いつものようにカレーを巨大な寸胴鍋で作っている。椿銃砲店のサーバに、秘伝のレシピがあるのではないかと皆が推測していた。
「これからどうするの?」となにげなく葉桐薫がアリョーシャちゃんに訊く。
「武装ヘリコプターを出してくださったコットンキャンディ・チームへもお礼に行ってきます」
いや、そうじゃなくて、お店、と薫。
「聖パルーシアの学園内に移転してもいいんじゃないの?」
「それはですね」と寸胴鍋をおたまでゆっくりかき混ぜながらにとろが答える。
「やっぱり、あの標高の高さ、素敵なお花、澄み切った空気の美味しさ、椿銃砲店はあそこがいいって、スタッフみんなが思っているんです」
「今は魔界ポータルもあるからなにかあった場合でも安心だものね」
来栖治子があいづちを打つ。
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