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「あ、小佐野さんいらっしゃいませ──探していた旧劇版エヴァンゲリオンの専用バインダー、ついに入荷しましたよ」
カードショップ、〈バジル〉の店長が入店した小佐野隊長に真っ先に告げた。
「やっと見つかりましたか!」
小佐野美潮は欲しかったアイテムが入手でき破顔一笑した。
初期のエヴァンゲリオン・ブームのとき、旧劇場版のトレカが発売されたのだが、これは一般的なトレーディング・カードとはサイズが違い、映画のスクリーンのような長方形のアスペクト比のカードだったのだ。
小佐野隊長はカードそのものはすべて収集していたものの、それを収めるバインダーが入手できなくて困っていた。結局はそれなりの値段ではあるものの、探していた小佐野美潮は買うのであるが。
小佐野隊長は、書肆こむぎ、という小さな出版社を趣味で経営している。
そんなことから、岡谷から書肆こむぎへの提案があった……カード・バトル系ではなくコレクション系というコンセプトの聖パルーシア学園特殊部隊トレーディング・カードなどはいかがでしょう、という。
小佐野隊長は岡谷の企画にのった。
「これなんていかがでしょうか?」
と、書肆こむぎが委託した丁寧な仕事の印刷会社による、聖パルーシア学園の特殊部隊のシリーズ。そのトレカを数枚、〈バジル〉の店長に見せた。なかでも傑作は、仲の良い葉桐薫と来栖来栖治子が椿銃砲店へ迎撃に出たとき、ちょっとした隙に見せた、薫と治子とが目を合わせて微笑む瞬間だった。
「聖パルーシアもののカードなら売れますよ!」
カードショップ〈バジル〉の店長は即断した。書肆こむぎから印刷工場に増刷依頼を出すほどに。
通好みの主要なカードショップでは、聖パルーシア学園シリーズは好評を博した。
カード・ショップ〈バジル〉からの帰り、ラーメン三郎に皆で寄って、いつもの健啖家ぶりを見せつける小佐野隊長。
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