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ふと、小佐野隊長は、人類純血保護機構の大規模侵攻を思い出し、自分が部室でほかの特殊部隊、それにポータル管理部とやりとりしていたことを思い出す。
あのとき、椿にとろは、懸念されていたよりは早く落ち着き、出撃できる状態に戻っていた。たしかに今までにないほどのパニックを起こしていたものの……。無線機に「にゃあ!」とまずは鳴き声をあげたと思うと、すぐに実戦用の装備を身に着けた。樫村しのぶもすぐに部室へやって来た。
ブラックホークを航空部から出してもらい、にとろもしのぶもすぐに椿銃砲店近辺の激戦区に降り立った。碧砂のミニガンの扱いは上手で、敵の輸送ヘリコプターを何機も破壊、墜落させた。
小佐野美潮隊長は、葉桐薫が執筆した『生かさず殺さず──地上への浸透をめざす価値の大転換』をも増刷しようと決めたのだった。
蓋を開けると、葉桐薫の本はけっこうな売れ行きを示し、趣味の本屋を自称する書泉グランデと書泉ブックタワーから『生かさず殺さず』の第ニ刷をお願いするメールが届いたぐらいである。
岡谷は人間界でその『生かさず殺さず』を読み、〈アンティセプティック・チーム〉の撮影に臨みたくなる──。
また、聖パルーシアのトレーディング・カードも小佐野隊長の予想以上の売れ行きだった。
こちらも増刷、新シーズン・パックのリクエストがあり、岡谷はメイキャッパーやコーディネイターとともに、〈アンティセプティック・チーム〉のカード用ポートレート写真を撮った。
カメラマンの仕事だけではやっていけない岡谷は、アルバイトをしながらレンズやRAWデータを保存するためのSSDなどを買い足している。足を撃たれ、入院していた聖パルーシア学園内部にずっと居たいという気持ちにさえなるときがある……自分でも意見がころころ変わるな……と忸怩たる思いとともに。
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