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通称、「亀」こと重装甲歩兵は午睡をしている椿にとろたち以外にも攻撃を加えてきた。
部室入り口で恐慌をきたしたままの椿にとろと猫たちに加えて、もう一つの魔界ポータルが〈アンティセプティック・チーム〉の部室近くに出現し、そこからにとろの許嫁、椿銃砲店のアリョーシャちゃんとお店のスタッフの猫たちもまた避難してくる。
アリョーシャちゃんは椿銃砲店の跡継ぎである。人間の少年ぐらいの大きさで、二足歩行もできる猫、といったところだろうか。
特殊部隊、〈アンティセプティック・チーム〉の隊長、小佐野美潮は異常事態に気がつく。
特定の魔界ポータルがハックされているだけでなく、あちこちで魔界や聖パルーシア学園につながる魔界ポータルがハッキングを受けている。
特定されたポータルから同時多発的に、人外を異常なまでに憎悪する敵、人類純血保護機構の軍勢が押し寄せようとしている。
「魔界ポータル管理部! いったいどうなっているの!?」
「重装甲歩兵がそこらじゅうにいます! どうやって突破したのか……」
「こちらのポータル、アンティセプティック・チームがらみのものはもう完全閉鎖、お願い!」
了解しました、確認がとれた魔界ポータルから閉鎖しています! と魔界ポータル管理部の生徒が冷静さを失わないように答えている。
小佐野隊長は思い出す……ロシアのとある旧い収容所に、おそらくは軟禁されている魔道士がいる。その力を悪用して、人類純血保護機構の兵士たちが、聖パルーシア学園や魔界へと一斉攻撃を仕掛けてきたのではないか。
完全閉鎖から免れた重装甲歩兵が出現するときのドーンという音が遠くから聞こえた。小佐野隊長ですら、わずかながらも脅威を感じる敵であった。
小佐野美潮隊長はスマートフォンを手に取るとコールした。
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