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──来栖さん、いま侵入してきた重装甲歩兵の始末頼めるかしら?
来栖治子はカーブやウェーブのもちがいいデジタルパーマを聖パルーシア高等部美容科の生徒に施術してもらい、ちょうど終わったところだった。自慢のピンク色の髪がくりんくりんとあらゆる方向へ跳ねている。
「行けます、隊長! 童貞のジャガーノート三体ですね!」
ええ、童貞かどうかは知りませんけど、と小佐野隊長。来栖治子はまるで出前にでも行くかのような気楽さと気軽さだった。隊長が続ける──。
「今、思春期病棟から樫村しのぶさんも愛用のナイフを持って迎撃にでたわ、来栖さんが使う大型ナイフも用意するようお願いしておきました──ジャガーノート二体は殺ってちょうだい」
「了解、それでジャガーノートはどこに?」
「マリアさまの像の近くよ」
「大胆ー!! てか、生意気!!」
来栖治子は通称、スカウターと呼ばれるタイプの情報ゴーグルを通学に使っているイースト・ボーイのデイパックから取り出してかける。
即座に聖パルーシア学園内の地図が情報ゴーグルに映し出される。全世界測位システムと同期、目指すべき重装甲歩兵の三つの赤い点を確認する。
マリア様の像の反対側からやってくるスカイブルーの点が樫村しのぶである。さきほど小佐野隊長とやりとりしたように、来栖治子は樫村しのぶに連絡する。
「こちらはASTの来栖です! しのぶ先輩のほうが早く着きますか?」
「そんな感じね、慎重に仕留めていきましょう」
はい、と治子が答えると、しのぶは、期待してるわ、オーバー、と通話を切る。
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