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 (サント)パルーシア学園はなにしろ広大な敷地を地上と魔界の中間に持っているため、たまたまマリア像の近くにジャガーノートが出現したのはありがたかった。  スカイブルーの点が近づく。  治子は情報ゴーグルをオフにする。  樫村しのぶを目視、治子は手を振る。しのぶはハンドサインで治子に戦術を伝えた。自分が(おとり)になること、迎撃そのものは治子にやってほしいこと。    治子はうなずいた。しのぶは治子用の戦闘ナイフを放り投げてくれる。治子はそれを上手にキャッチ。  しのぶはジャガーノートと対峙する。かと思うとそのまま職員室のある煉瓦造りの建物の裏へと逃げてゆく。  三人の重装甲歩兵は一斉にしのぶを追う。治子はナイフのナイロン製の(シース)を振り捨てると、隠れていた生け垣から飛び出し、重機関銃を構えた最後尾の重装甲歩兵(ジャガーノート)、右の肩関節の隙間に突き立てた。  ジャガーノートが痛苦に耐えかねて、重機関銃のホールドも怪しくなる。   「死ね、このハゲ!」勝手に目の前の重装甲歩兵をハゲ呼ばわりしながら、治子は注意深く、重機関銃を持つ手の関節、その隙間にもSOG(ソグ)社製のナイフを突き立てる。血しぶきが上がる──。  一方で樫村しのぶは真正面から別のジャガーノートに向かい、やはり構えていた重機関銃の銃弾から逃れるように至近距離に飛び込み、露出しやすい関節を狙う。ほぼ無効化させたジャガーノートは痛みで銃弾をめちゃくちゃにばら撒きだす。  しのぶは伏せた。   「今よ! 重機関銃奪って!」    治子は、ジャガーノートがぎりぎり把持(はじ)している重機関銃をそのまま鹵獲(ろかく)[*1]し、まだ倒していない最後のジャガーノートの後頭部に向けて撃った。  最後のジャガーノートがよろけている。 「治子ちゃん、適度に痛めつけて!」  はい、と答えるのと同時に来栖治子は、最後のジャガーノートの背後から、重機関銃を撃ち続ける手の関節を狙い、ナイフで腱を切り裂いた。重機関銃が落ちる。  落ちた重機関銃を遠くに蹴り、重装甲歩兵に撃たれないようにする。            [1*] 鹵獲(ろかく)  基本的に敵の兵器や銃器を奪って自軍の戦力にすること。もちろんその場合は国籍マークなどは描き直さねばならない。捕獲でも意味は合っているのだけど、わざわざこんな言葉を用意してくれている日本語は凄い。
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