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一体を残して、残りの重装甲歩兵は出血多量で絶命した。
大怪我をしたものの残った重装甲歩兵一名は、もしかしたら拷問で口を割るかもしれない。たぶん、聖パルーシア学園の闇の深い非公然部隊か特務の仕事なのだろう。
小佐野隊長から治子のヘッドセットに通話があった。おそらく戦闘の一部始終は警戒用のライブカメラから見ていたのだろう。
「樫村しのぶ先輩、それに来栖さんおつかれさま、とにかく〈アンティセプティック・チーム〉の部室へお願い……なにが起こったのかはこの通話で伝えるわ」
遡ること約十五分前、聖パルーシア学園や魔界から地上へ出るポータルが同時多発的な攻撃を受けていること。現在、〈アンティセプティック・チーム〉では椿にとろと六花鐘碧砂が戦力にならないこと……などなど……。
〈ブロードキャスト・チーム〉、〈コットンキャンディ・チーム〉をはじめ、聖パルーシア学園の特殊部隊、通常部隊が総出でことに当たっている。
「制服とデイパックが穢れてパアだわ……」
「大丈夫、みんな聖パルーシア学園が再び買い揃えるお金ぐらいポンと出してくれるわよ。そのぐらい今は危機にあるの。部室で装備を整えたら、すぐに別任務をお願い」
「隊長、薫と一緒なんですか」
もちろんよ、と小佐野隊長。
「葉桐さんとのチームでお願いするわ。これからの任務はスナイパー・ライフルの狙撃戦と、ナイフによる超近接戦、両方だから」
来栖治子は、突撃もしながら高威力のスナイパー・ライフルで長距離戦を狙う、その通称で任務を確認した。
「突スナがニ名要る、と」
そういうことね、と小佐野隊長が返した。
「まあ、それはいいとして、次なる任務は、椿銃砲店の奪還よ。今は通常歩兵と重装甲歩兵に占拠されちゃっているの」
「お店のアリョーシャちゃんや彼の御両親、それにスタッフたちは──!?」
「安心して、椿銃砲店からは全員早めに避難していて、みな大丈夫だから──それと、銃はワルサーのWA2000かH&KのPSG-1かどちらかにしてもらうわ。メンテナンスの済んだスナイパー・ライフルがこの二種だけなの」
「銃については了解です! WA2000でお願いします。薫もすぐに来られます?」
「もちろんよ──さっき葉桐さんは、金時計を六花鐘さんに渡して、重要事項を下命させに魔界へと……それにもう一人、非戦闘員も同行します」
えっ……誰ですか? と来栖治子。
「カメラマンの岡谷さんよ」
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