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「にゃあにゃあ! あにゅにゃあ! みゃぁっふー! ふー!」  猫とヒト科のハーフ、(サント)パルーシア学園中等部二年生の椿が、所属している特殊部隊〈アンティセプティック・チーム〉、通称ASTの部室にパニック状態で飛び込んできた。  茶色の長いツーサイドアップの髪、そして器用に出したり引っ込めたりできない猫の耳と尻尾。一見、(さち)薄そうな、まだ雀斑(そばかす)が残る(いとけな)い顔──。  それまでパソコンに向かっていたアンティセプティック・チームのリーダー、小佐野美潮(みしお)隊長は恐慌をきたした椿にとろの言葉を理解するために、豊満な胸の中のプロセッサとパソコンとを接続させる。制服のボタンを二つ外し、胸元のポートに自分でパーツを吟味し、組み立てたハイスペックのパソコンを接続した……もう高機能すぎてパソコンというよりワークステーションに近い。  だいたいが猫が騒ぐのはお腹がすいたか、かまってほしいかのどちらかだが、椿にとろの尋常でない様子に小佐野隊長は文字通り胸の中のAMD製Ryzenブランドのスレッドリッパー・プロセッサとワークステーションを接続したのだった。  そして着用していたヘッドセットのマイクに──タスク切換え、猫語翻訳で──と音声入力。即座にキティトランスというアプリが起動し、にゃあにゃあとパニックになっているにとろの声の翻訳処理がはじまる。
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