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鈴音3
死にたい。だけど飛べない。死にたくない。だけど戻れない。
やっぱりそうだ。蓮音に助けてほしいと思った。でも助けてくれても救われない。だから、蓮音の助けを拒み続けてきたのに。ずっと遠ざけてきたのに、最期に泣き言を言ってしまうなんて。自分が悔しくて堪らない。
あたしをここから突き落として、なんて頼めるわけがない。
蓮音があたしを助けてくれたとみんなに知れたら、蓮音までどんな目に遭うか分からない。
「ねえ、なんで僕の前でも大丈夫なフリをするのさ。ずっと一緒だったのに、苦しくなったら独りにならないでよ。僕を避けないで頼ってよ」
「厭なの! あたしのせいで誰かが傷つくの。いじめの仲裁に入った蓮音が蹴られてて、あたし辛かった。蓮音まで傷つくなんて耐えられない」
「僕は大丈夫だから」
「あたしが厭なの! あたしが耐えられないの!」
あたしは後ずさる。今なら、このまま落ちれる気がする。
「逃げんなよ!!!」
蓮音の叫びに足が止まる。叫び声に空が刺激されて、急激な豪雨が降り始めた。
「ピアノの伴奏だとか、守られて辛いとか、一人で抱え込むんならちゃんと闘えよ! 闘い抜いて、やり切ってみせろよ。本当は投げ出したくなんかないんだろ?」
「だから、あたしには無理な——」
「それができないなら頼れ! 辛いって言え! 覚悟キメろよ!」
雨音を切り裂いて、蓮音が全力で訴えかけてくる。あたしだって全力でやってるよ。
「こっちも辛いんだよ! 辛そうにしてる鈴音を見てるのが。なのに頼ってくれない。助けさせてくれない。守りたいのに守れない自分の無力さが滲んでくる。僕だってもう厭なんだ!」
擦れて聞こえる蓮音の声があたしに突き刺さる。雨で分からないけれど、蓮音は泣いているのかもしれない。
傷つけたくない。そんなあたしの思いが、蓮音を傷つけていたなんて……。
「なあ、覚えてるか?」
蓮音は少し落ち着いて、雨音にも負けずにあたしに語りかける。
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