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飢えの衝動に突き動かされ、彼はジャンプした。飛距離が足りず、生き物の手前に着地する。生き物が……少女が……顔をあげ、はっと息を呑む表情を見せた。彼はそのまま地上を走り、生き物を片手で引っ掴んで、手近な木の上に駆け上がった。
木の枝の上で、彼と少女は向かい合う。大きく見開かれた少女の目に、自分自身の姿が映っているのを彼は見た。まばらに毛が生えた、骨ばった顔……鋭く尖った不揃いな歯……死骸のような灰色の皮膚……そして大きな、真っ赤な丸い目。
ナント醜イ、と彼は思った。そして大きく口を開け、少女の頭を齧りとった。
少女の頭がなくなったので、その向こうに隠れていた赤ん坊の顔が見えた。少女の首から噴き出した血が雨のように降り注ぎ、赤ん坊はそれを見てきゃっきゃと喜んでいた。ボリボリと少女の頭蓋骨を咀嚼しながら、彼は赤ん坊をしげしげと眺めた。
少女と赤ん坊を両方とも平らげた後、久々に腹が満ちたことを感じ、彼は木の上でだらしなく眠り込んだ。やがて物音が聞こえて目を覚ますと、木の下にさっきの生き物が、大勢集まっていた。さっきと同じ生き物だろうが、今度のは大人だ。さっきのよりずっと背が高く、頑丈そうだ。手に手に長い棒や棹を持っている。ちょうど一人が木の下に落ちた少女の着物を見つけ、拾い上げたところだった。それだけは、どうしても食い切れなかったのだ。
着物を持った男が顔を上げて、彼を見つけた。そして叫んだ。
「コトリや! そこにコトリがおるぞ!」
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