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「遊んであげてもいいわよ」
翌朝。幼いながら不遜な態度で現れたあかねを見て、瑠璃は止めていた足を再度動かした。
瑠璃は家の前を流れる川で洗濯をしている。桶に川の水を入れ、青葉の着物を踏んだ。
「ねえ、聞いてる? 青くんのお願いだから、わざわざ誘いに来てあげたのに」
あかねは川べりに腰をおろして「はあー」と大きなため息を吐く。
「ねえ、どこから来たの?」
瑠璃は桶の水を入れ替えてまた青葉の着物を踏む。新しい水は冷たく足が鈍く痺れるのを感じた。
あかねの質問は聞いていたが何と答えていいか分からない。
それから三度あかねが同じ質問をする。しかし瑠璃が何も答えないので、あかねは答えをもらうことを諦めたようだった。
「それが終わったら、ひよりちゃんも呼んで鞠つきしない?」
ひよりというのは、あかねの家の向こう隣の家の娘だ。ひなたという兄がいて、ひよりという妹がいると昨晩青葉が教えてくれた。
瑠璃は桶の水を流して着物の水分を絞る。小さな手で何度も何度も絞る。
「あー、もう、手伝ってあげるわよ!」
あかねが怒りながら瑠璃の側に来る。瑠璃はなぜあかねが怒っているのか分からなかった。怒っているのに手伝ってくれることも理解できなかった。
「さっさと干すわよ! その桶もちゃんと持ってくるのよ」
あかねが濡れた着物を持つので、瑠璃は指示された通りに桶を掲げた。
十歳だというあかねは瑠璃より頭ひとつ背が高い。お下げ髪の先が肩で揺れている。
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