春の幻影

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 掃除も終盤、瑠璃は玄関土間の土を外に掃き出していた。   「遊びましょ!」  瑠璃が顔を上げると、玄関の外にあかねがいた。 「鞠つき?」 「あら? 鞠つきできなかったのに、気にいったの?」  気にいったわけではない。あかねが「遊ぶ」と言ったから鞠つきをするのだろうと思っただけのこと。 「ひよりちゃんにも聞いてみましょ? ほら、そのほうきをすぐに片付けてきて」  瑠璃は頷いた。  道具を元の場所に戻してくると、あかねは瑠璃の手を引いた。  昨日はされるがままだったが、今日はその手を握り返してみる。  あかねは何も言わなったが、少しだけ笑っていた。  
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