歌なんて歌えない

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 走っているうちに、ぼんやりと光っていた街灯(がいとう)徐々(じょじょ)に強い光へと変わっていく。   「どこへ行くの」  大きな声で叫んだけれど、エンジン音が加速してバイクのスピードがあがっていくだけだ。  色が深くなった風景の中で、街灯が浮かび上がるように次々と現れては後ろへと流れていった。 「もう降ろして」  父が何か叫び返したが、その声はエンジンの音と重なって聞こえなかった。
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