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どろどろの土の塊をさらさらの砂をかけて丁寧に丁寧に撫でる。少しでも強く擦ると表面が剥がれてでこぼこした土の表面が見えてきてしまう。ぴかぴかの泥団子を作るのは容易いことではない――
「私のこと愛してる?」
またやってしまったな、と思う。話題に詰まってしまった時にどうしても訊いてしまう。今回こそはやめようと思っていても口から出てしまう。
「ああ、うん」
とぶっきらぼうに電話越しの恋人のような人は答えた。初めの頃はもちろん。と甘い声で答えてくれたのに。と思ってしまう。綺麗なのは最初だけでいつだって結局崩れてぼろぼろになるのかな。そう思ってしまった。
通話を切った私はベランダに出てまんまるのお月様を眺めた。子供の頃に大好きだった泥団子みたいだった。つるつるしてて手に取りたくなるようだった。試すような。測るような。確かめるような。そんな愛し方しか私は知らない。優しく。慎重に。崩れないように。純粋に土の塊を宝物だと思っていた私はどこにいってしまったの?私の小さな心の声は月にも、過去にも、未来にも届かない。
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