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藤城先生とお母さんは、一匹の犬を飼っている。
もう、十六歳になる柴犬である。
名前を、ゴンという。
しかし、正式な名前がある。
『権平平蔵』である。
以前、藤城先生が書いた小説の登場人物の名前で、やたらと強い設定の武士だった。
強く、長生きするように、とゴンに同じ名前を付けた。
しかし、藤城先生には、とても恐れていることがあった。
それは、このゴンとお母さんの死である。
二人は、藤城先生より、年をとっているので、藤城先生より早く死ぬだろう。
それを思うと、藤城先生は、夜も眠れないほど、怖いのだった。
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