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藤城一成先生は、いつも、疲れている。
小説家でイケメンではあるが、売れっ子ではない。
なので、貧乏である。
母一人、犬一匹と暮らしている。
藤城先生の小説は、売れないので、原稿料も安い。
だから、もう七十になるお母さんが、パートで、ビルの清掃をして生計を立てている。
藤城先生は、いつも、申し訳なく思っているが、藤城先生は、小説を書くことしか出来ない人間である。
申し訳ない、、と思う度に、どっと疲れる。
いや、働いているお母さんの方が疲れているのだ、と思うと、また余計に疲れてしまう。
ドツボである。
しかし、当のお母さんは、楽しそうに働いている。
だから、藤城先生の思い過ごしなのだが、もう、そう思ってしまう性格なので、どうしようもない。
今日も、お母さんが、仕事に出る前に、いつもの栄養ドリンク剤を飲んでいる。
リポ○タンDである。
お母さんは、このドリンク剤のことを、「リポ○タンでー」と言う。
藤城先生は、いつも、それを聞く度に、「でー」ではなく「ディー」ではないか、と思うのだが、どちらが正しいのか、何十年も前から、謎である。
藤城先生にとって、そんな些細なことさえ、疲れる原因となる。
もう、そんなに疲れるなら、リポ◯タンでーだか、ディーだか、を飲めばいいのだが、藤城先生は、自分は、働いていると思えないので、申し訳なくて、飲めないのだった。
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